現代日本では65歳以上の高齢者が3,617万人にも上り、総人口の28.7%を占め、過去最高の記録を更新し続けています。
介護市場は需要拡大が確実視されており、他業界と比べて売り手市場となっていますが、2020年はコロナ禍での雇用不安から介護業界への転職希望者が増え、7割が異業種からの転職でサービス業・主婦等の流入が目立ちました。
慢性的な人手不足が続く介護業界ですが、それでも正社員になるためには実務経験や資格を取得しておいた方が有利になる場合もあります。そこで「資格も経験もないけど介護士として働きたい」という方におすすめしたいのが今回ご紹介する「介護派遣」という働き方です。
介護派遣は労働条件の融通が効きやすい上にプライベートの時間も大事にできて、なおかつ高時給という多くのメリットがあります。本記事では正社員と派遣社員の違いや介護派遣で働くことのメリット・デメリット、介護派遣でのお仕事の始め方や派遣会社の選び方まで幅広くご紹介しています。
介護派遣での働き方がイメージできない方や、派遣社員のメリットが分からない方は是非本記事を参考にしてみてください。
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介護派遣って何?正社員とどう違うの?
介護派遣とは、介護施設や介護が必要な現場で、派遣社員として勤務する雇用形態です。では、派遣社員と正社員の違いはどこにあるのでしょうか?
両者の違いは大きく分けて、雇用主と雇用期間にあります。介護施設で働いた場合を、例に見てみましょう。
まず、派遣社員の場合、雇用主は介護施設ではなく派遣会社です。直接的な仕事の指示は介護施設側が行いますが、勤務条件や賃金に関しては関与できません。正社員の場合、雇用主は介護施設です。そのため勤務形態に関する内容も、直接当事者間でやりとりができます。
雇用期間については、派遣社員の場合は3か月や6か月といった契約期間を定めた上で、勤務します。契約期間が満期になった場合、派遣社員と介護施設の双方が話し合いをした上で、契約継続か終了かを決めるのが一般的です。片方が継続を希望したとしても、もう片方が条件に納得いかない場合、契約終了を申し出ることできます。
正社員の雇用期間は、基本的に無期雇用です。派遣社員の悩みの種である「契約が切られるかもしれない」という不安は少ないといえます。
介護派遣の3つの形態
介護派遣として仕事を始める場合、3つの派遣形態があります。どの働き方が自分に合っているのか、比較検討してみましょう。
登録型派遣
登録型派遣とは、まず派遣会社に登録をして派遣先が決定してから、雇用契約を結ぶ形態です。一般的に派遣というと、登録型派遣の形態をイメージする人が多いでしょう。
派遣期間が終了すると元の登録関係に戻り、再び派遣先が決まれば雇用契約の関係になる、というのを繰り返します。「いろいろな現場で多くのことを学びたい」「介護職の経験が浅い」という方におすすめです。
常用型派遣(無期雇用派遣)
前述の「派遣期間が終わると雇用関係がなくなる登録型派遣」に対し、常用型派遣は派遣会社と常に雇用契約を結ぶ働き方です。
派遣先に斡旋されていてもいなくても、常時、派遣会社の社員であると考えると分かりやすいでしょう。派遣先が決まっていない間、つまり仕事をしていない間も、社員として給与や福利厚生が保証されます
登録型派遣よりも安定していますが、専門性を求められたりスキルや知識が必要だったりと、採用のハードルはやや高め。「社員になりたいけどプライベートも充実させたい」「いろいろな現場で学びながらも、収入は安定させたい」という方におすすめの形態です。
紹介予定派遣
紹介型派遣とは、派遣先の企業・施設の正社員となることを前提にした働き方です。最長で6か月の派遣期間を終えたあと、派遣先と派遣社員双方で話し合い、直接雇用契約の有無を決めます。
入社前に仕事場の現状や人間関係などを把握できるため、就職後のミスマッチが減ります。「介護の仕事が好き」「1つの会社に腰を据えたい」と考えている方におすすめの形態です。
初めて介護職に就く人に派遣がおすすめな理由
介護未経験者が介護職に就くのであれば、直接施設・事業所に就職するより、派遣会社を通した方がおすすめです。
自力で未経験者歓迎の施設・事業所を探すこともできますが、実情までは分かりません。実際に働いてみたら未経験者には困難な仕事を任せられたり、労働環境が整っていなかったり、といったケースもありえます。派遣会社は派遣先が未経験者に対してどのような指導を行なっているのか、どのような労働環境なのか、ある程度把握しています。
派遣会社によっては、介護職に必要な資格獲得をサポートしてくれるところもあるため、活用しない手はないでしょう。仕事で困った時は、職場の人だけでなく派遣会社スタッフも相談に乗ってくれます。未経験であれば頼れる存在は多いほど安心です。
このように、介護職未経験者は派遣会社を通して仕事をすることで、さまざまな「安心」を獲得できます。
介護派遣で働くことのメリット
派遣という言葉に、「不安定」「給与が安い」「正社員との差」など、悪いイメージを抱く人も少なくありません。
しかし介護派遣には、介護職であり、なおかつ派遣だから得られるメリットが多くあります。
時給が高い
介護派遣の時給は1,500円以上で提示されている場合が多いです。一方で、東京都23区で飲食店スタッフとして派遣で働いた場合、平均時給は1,400円前後とされています。
介護派遣の時給が高いのは、人手不足を補いたい、という背景が考えられます。介護職の人手不足が声高になってからしばらく経ちますが、いまだに改善されたとは言い難い状況です。
人材を育てるために、まずは人が集まらないとならないため、時給設定もやや高めの場合が多いといえます。
また、介護職は資格によって時給が上がることがあります。より効率よく給与を得るのであれば、資格の獲得を検討してみましょう。
基本的に残業がなく、あっても残業代が支払われる
基本的に派遣社員は、残業がありません。派遣社員と派遣先施設・事業所は雇用関係にないため、残業を依頼されても断ることができます。サービス残業をこなす必要がないため、プライベートを充実させたい方にとって、嬉しいメリットです。
しかし派遣社員と派遣会社の間に、残業の有無について事前契約がある場合、内容に則って残業を行います。その場合は原則、残業代が支払われます。残業代の支払われ方は派遣会社によって異なるため、契約締結の際に確認をしておきましょう。
時間や勤務地、期間の融通が効きやすい
派遣社員の場合、時間や勤務地、働く期間の融通が効きやすいです。たとえば「介護をしなくてはならない家族がいる」「学業と両立をさせたい」といった場合も、希望の時間や勤務地を伝えれば、条件に見合った仕事先を紹介してもらえます。
無資格や未経験でも始められる
介護派遣の募集には、無資格・未経験者歓迎という内容もよく見かけます。
実際に介護現場に飛び込んでみると「資格があるものの実際に現場で働いてみたのは初めて」という人や「これまで介護に関わったことがない」という人も少なくありません。
介護の仕事においては、座学で学んだ知識も重要ですが、体験で学んでいくことも多くあります。
実際に働きながら知識や経験を増やしていく仕事であるため、無資格・未経験でも臆さなくて大丈夫。
仕事の悩みには派遣会社が相談に乗ってくれる
仕事場でトラブルに巻き込まれたり、人間関係に悩んだりといった事態も起こるかもしれません。そんな時、派遣会社は、派遣社員の仕事における悩み相談にも乗ってくれます。
派遣会社の担当者は、派遣社員が抱えるたくさんの悩みを、見てきた人たちです。経験から一人一人に合った解決策を模索し、アドバイスをくれます。
仕事関係の悩みでどうしても現状で解決策が見出せない場合、契約期間中であってもほかの派遣先を紹介してもらえるケースもあります。辛い悩みやストレスは抱え込まず、派遣会社の担当者に気軽に相談しましょう。
短期間のうちにさまざまな職場でスキルを磨き、実務経験を積むことができる
介護現場に限らず、同じ業種でも会社や施設、現場によって仕事内容や理念は異なるもの。そして派遣の契約期間は、3か月〜6か月で設定されている場合が多いため、短期間でさまざまな職場をまわります。
つまり、短い時間で数々の職場をまわり、それぞれの仕事や考え方を学ぶことが可能です。介護職でいえば、デイサービスや有料ホームなど、複数の介護現場での経験を積めます。最終的にどの介護現場が自分に合っているのか、短い期間で指標が見えてくるでしょう。
希望に合う職場を派遣会社が探してくれる
派遣会社に登録をする際、派遣先の希望や勤務条件を派遣会社に伝えます。その後、派遣会社は伝えられた内容から派遣社員に適した職場を探し、派遣先として提案する、という流れです。
自力で仕事先を探すとなると、希望に近い職場を探すのは時間も手間もかかります。また、希望の勤務形態や給与を会社に直接伝えることに、躊躇してしまう人もいるのではないでしょうか。
派遣会社というワンクッションが間に入ることで、仕事探しにストレスを感じにくくなります。
介護派遣の3つのデメリット
介護派遣にはメリットが豊富ですが、デメリットもゼロではありません。
派遣社員が抱えやすい不満についても押さえておき、メリットと天秤にかけた上で派遣という選択肢が本当に自分に合っているのか、検討をしてみてください。
昇給や賞与がない
派遣社員の場合、昇給や賞与がない場合もあります。2020年4月の法改正で、派遣社員にも昇給・賞与を与えられるようになりましたが、まだ未実装の派遣会社も多いのが現状です。
昇給・給与を実装している派遣会社でも、時給に組み込んでいる場合がほとんどです。そのため、ボーナス・昇給の時期になると正社員との差を感じてしまう派遣社員も多くいます。さらに、仮に実装していたとしても、勤務時間や業務内容から正社員と同等の昇給・賞与を与えるに値しないと判断されることも。
長期間同じ場所で働けない
労働者派遣法第三十五条の三において、派遣社員が1つの派遣先に継続して勤務できるのは3年まで、と定められています。通称「派遣3年ルール」とも呼ばれている制度です。
好条件の勤務先に出会えた場合でも3年で職場を変えなくてはならない、というのは一見大きなデメリットに思えます。しかし対策方法が、ないわけではありません。
3年以上働きたいと思い、勤務先も同じように継続して働いてほしい、と願っているのであれば、「常用型派遣」に切り替えるといった選択肢もあります。また、同じ企業内で部署を変えてもらえれば、再び同企業内で3年間働くことも可能です。
勤務先と派遣社員の利害が一致しているのであれば、派遣先や勤務先に相談をすることで、解決策が見えてくるでしょう。
施設・事業所によっては風当たりが強いことも
介護派遣社員は、施設や事業所によっては居心地の悪さを感じることもあるでしょう。
残業をしないことをやっかまれたり、仕事に関する責任の重さが違うのに社員よりも給料が高いことを責められたり、といった事態は珍しくありません。また、派遣社員=現場経験豊富と思われて、即戦力を期待されてしまうケースもあります。
いずれも派遣会社に相談をすることが大切です。風当たりの強さから自分自身の判断でサービス残業をしてしまうといったふうに、契約外の負担を増やさないようにしましょう。
あなたはいくつ当てはまる?介護派遣に向いている人の特徴
「介護派遣に興味があるけど一歩を踏み出せない」「やってみようと思うけど、自分に向いているか分からない」と考えてしまう方も多いのではないでしょうか。
介護派遣を始めてみたい、と考えている方は次のチェックボックスに当てはまる項目があるか確認してみましょう。1つでも当てはまれば、介護派遣という働き方に充実感を覚えるはずです。
派遣登録からお仕事開始までの流れ
介護派遣社員を始めるにあたり、まずは派遣会社の登録から始めなくてはいけません。
ここでは、派遣登録から仕事開始までの流れについて確認しておきましょう。
まず、条件に合った派遣会社を見つけたら、無料登録を済ませます。その後、担当者と希望条件の擦り合わせを行います。マッチする仕事があれば、担当者から連絡が入ります。
派遣先によっては、職場の見学が可能です。その後、気に入れば派遣会社と雇用契約を結びます。
契約締結後は、決められた日時に仕事開始です。
介護派遣で大切なのは、希望条件をきちんと派遣会社に伝えることです。まずは一通りの希望条件を伝えましょう。必要に応じて妥協しなくてはならない点が出てくれば、その時は派遣会社の担当者と一緒に、どの希望を優先するべきなのかを判断すると良いでしょう。
まとめ
介護業界は深刻な人手不足です。そのため、働き手を集めるために各施設・事業所がより良い労働条件や環境を模索しています。努力の結果、「介護業界=ブラック」というイメージが覆されるような、優れた職場環境の介護施設・事業所も増えています。
とはいえ、まだまだ介護職に不安を抱えたり、求めるものが多かったりする方もいることでしょう。そんな中、介護派遣は働き方に多くの悩みや要望を抱えている方にこそぴったりです。
「希望する仕事が見つからないのは、自分がわがままだからかな……」「求めるものは多いけど、自分で仕事を探すのは面倒くさいな」そんな悩みを抱えている方は、ぜひ、介護派遣を検討してみてください。