原則、介護職には医療行為は禁止されています。しかし、医療的な知識を必要としないほどの軽微な傷の処置や服薬・口腔ケアなどは「医療的ケア」の名称に変更され、介護職が行うことが許されています。また、条件付きで利用者さんに対して実施可能な医療行為もいくつかあるため、条件と共に記載しています。一方で、介護現場でよく見られる処置ではあるものの、介護職が行うことを許可されていない医療行為もあり、注意が必要です。禁止されていると知らずに実施してしまい、利用者さんに万が一のことがあった場合には、送検されるケースもあるため、しっかりと把握しておくことをおすすめします。
医療的ケアと医療行為の違いをご存知ですか?介護職は、医療的ケアを行うことは許されていますが、医療行為は原則禁止です。しかしながら、一定の条件下で許可されている医療行為も存在します。
介護職としてこれから働く予定のある方や、医療行為に関する知識があまりない方などは、ご自身の携わっている業務に問題がないか、不安になる方もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、介護職に許されている医療的ケアと禁止されている医療行為を具体的に一覧でご紹介しています。日頃、介護現場で行っていることが医療行為にあたるか否かのご確認にもぜひご活用ください。
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医療行為は介護士にもできるの?
まずは、介護士に医療行為が許されているか否かを正確に把握しておきましょう。
結論から申し上げると、医療行為は看護師や医師の免許がないとできません。介護士は原則、医療行為はできないという前提を覚えておきましょう。
とはいえ、介護現場の人手不足などを背景に制度は頻繁に変わっているのが現状です。現在は、一定の条件下であれば介護士も行える医療行為や、医療行為ではあるものの、介護士でも実施可能な「医療的ケア」に分類するものが明確に分けられており、「原則禁止だが介護士でもできるものもある。」という解釈が最も正解に近いでしょう。
全部で3パターン!介護士ができる医療ケア&医療行為まとめ
「結局、何ができて何が禁止なの?」そんな疑問が湧くかと思いますので、介護士が実施可能な医療的ケアと医療行為を一覧でまとめました。
①介護士ができる医療的ケア一覧
まずは、介護士が行っても問題のない医療的ケア一覧です。
携わっている業務の中で、毎日行っているものもあるのではないでしょうか?
- 体温計を使った体温測定
- 自動血圧測定器を使った血圧測定
- パルスオキシメータの装着(入院治療が必要のない場合のみ)
- 軽い傷ややけどなど専門的な判断や技術を必要としない処置
- 医薬品使用の介助
- 包化された内用薬の服薬介助
- 湿布を貼る
- 軟膏を塗る(褥瘡の処置は含まない)
- 目薬の点眼
- 座薬の挿入
- 鼻腔粘膜への薬剤噴霧
湿布を貼ったり、目薬を差したり、一般家庭でもできる範囲のことは概ね許されているといったイメージです。ただし、記録を毎回残すことを忘れずに。異常があったら必ず医療職に報告しましょう。
②条件付きでOK!介護士ができる場合もある医療行為
続いて、条件を満たしていれば介護士が行なっても問題のない医療行為についてまとめました。
- 耳掃除(ただし耳垢栓塞の除去はNG)
- 爪切り(爪や皮膚に異常がなく、糖尿病などの疾患に伴う専門的な管理が必要ない場合に限る)
- 口腔ケア(歯周病などの異常がない場合に限る)
- カテーテルの準備や体位の保持
- ストーマのパウチに溜まった排泄物の除去(肌に接着したパウチの取り換えはNG)
- 市販の浣腸による浣腸(使用する浣腸に規定あり)
()内は介護士が行なってもいい場合の条件を記載しています。爪切りや口腔ケアなどは介護士が日常的に行なっているケアの1つですが、場合によっては医療職に処置を依頼すべきものもあります。迷った場合には、現場の看護師などに確認をしてもらいましょう。
③医療的ケアの研修を受けた介護士が可能な医療行為
最後は、医療的ケアという医療行為を行うための研修を修了することで介護士でも行える医療行為です。研修にも費用が必要であり、資格手当が付く場合もあります。
- 喀痰(かくたん)吸引
- 経管栄養
特に喀痰吸引は、夜間に看護師の常駐がない施設の場合、資格を持っている介護士の存在は重宝されることがあります。
職場で研修費用を出してもらえる場合もあるため、医療的ケアの研修を修了したい場合は費用の工面をしてもらえるか確認してみましょう。
ちなみに、実務者研修の中で医療的ケアについても講義がありますが、実務者研修を受けただけでは喀痰吸引や経管栄養を利用者さんに実施することはできないので注意が必要です。
実際に利用者さんに対して実施する場合は、登録研修機関として登録されている医療機関などで実地研修を修了し、都道府県への申請を行う必要があります。
【やってはいけない】介護現場でよくある医療行為
続いてご紹介するのは、介護士がやってはいけない医療行為です。
- 摘便
- 褥瘡の処置
- インスリン注射
- 血糖測定
- 点滴管理
介護施設などでは、看護師の人数が少なく、介護士が上記の内容を依頼される場面もあるかもしれませんが、介護士は行なってはいけない行為であるとの認識を忘れないようにしましょう。
特に、摘便は処置を行うための道具等も必要なく、看護師に依頼するより、排泄介助のついでに自分で行ってしまった方が早いと感じることも、もしかしたらあるかもしれません。しかし、介護士が行えない医療行為にあたりますので、必ず医療職に相談・処置依頼をするようにしましょう。
医療行為にあたるのでは?…と迷ったら
介護施設など、介護の現場で働いていて、医療行為か否かの判断に迷うこともあるかもしれません。そのような場合には、必ず、現場の医療職に確認するべきです。
時間に追われ、余裕が無くなると「少しぐらいなら…」と禁止されている医療行為を実施してしまいたくなることもあるかもしれません。しかし、それによって利用者さんの命を危険に晒してしまったり、死亡事故に繋がってしまったりした場合は、送検されてしまうケースも否定できません。依頼された際に断れないと自己責任になってしまうので注意しましょう。
介護士が医療知識を身につける必要性
介護業界は、人手が足りておらず、今後もその状況は続くと予想されています。
このような状況下で、介護士が任される業務の範囲は、これからさらに増えていくことも十分に考えられるでしょう。介護士が行える医療行為に関する規定は度々改定されているため、定期的に確認して、最新情報を把握できるとなお良いです。
また、現場で必要な医療知識を日頃から頭に入れておく意識を持つことは非常に大切です。
介護士は、医療行為ができなくても、処置を行う瞬間に立ち会うことは少なくありません。このような機会を活かし、よく観察したり、看護師に質問したりして、積極的に学んでおくと良いでしょう。
まとめ
本記事では、介護職が行える医療行為や医療的ケア、行なってはいけない医療行為について解説しました。介護現場では、日々様々なケアが行われますが、介護職が行えることとそうでない事は明確に定められています。
「知らなかった」「指示されたから」では済まされない事態に陥ってしまう可能性も否定できませんので、ご自身の身を守るためにも、行って良いことと行ってはいけない事をしっかりと把握して、業務に臨みましょう。