食事介助を行う際は、高齢者の食事の特徴を把握したうえで行うと、よりスムーズに実施できます。また食事介助を滞りなく行うためには、食事をする前の準備も非常に重要です。認知症などで食事の時間を認識できない方や、食事に集中できない利用者さんがいる場合は環境調整を行ったうえで、食事を始めましょう。介助を行う際の注意点や認知症の方への食事介助のポイントなども併せて記載していますので、参考にしていただければ幸いです。
介護現場で働き始めたばかりの方の中には、食事介助の方法について復習したり、確認したいと感じるポイントがあったりする方もいるのではないでしょうか?
食事介助は、介護士として働いている方であれば、毎日行うことのある基本的な業務の1つです。しかし、時間がかかったり、摂取量がなかなか増えなかったりと、うまくいかないと感じることも多いでしょう。
そこで本記事では、食事介助の基本的な手順やポイントについて分かりやすく解説します。
高齢者の食事の特徴や麻痺がある場合の注意点なども併せて解説しますので、食事介助につまずいている方や、これから食事介助に携わる方の参考になれば幸いです。
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押さえておきたい高齢者の食事の特徴
食事介助の解説に入る前に、高齢者の食事の特徴を理解しておきましょう。加齢に伴う身体の変化を理解しておくことで、食事介助の手順や注意すべきポイントなどについても理解が深まるはずです。
高齢になると、口腔内の状態や味覚に次のような変化が起こります。
- 歯が弱ったり、入れ歯になったりするため、かたいものが食べにくい
- 唾液の量が減るため、水分量の少ないものが飲み込みづらい
- 味覚が鈍化するため、味付けの濃いものを好む
- のどの渇きに気付きにくい
など
私たちの身体の状態とは、様々な点において異なるため、食事の形態や口に運ぶスピードなど、高齢者が摂りやすい食事を意識しながら介助を行う必要があります。
以上を踏まえたうえで、食事介助の手順を確認していきましょう。
介護現場における食事介助の手順
では、ここから介護現場で活かせる食事介助の手順について、解説していきます。
始めに、食事介助の準備について解説し、続いて食事介助の具体的な手順を説明する、という流れになっています。
食事前の準備
食事介助を始める前の準備も非常に大切なポイントです。介護現場では、認知症を患っている高齢者も多く、「今から食事をする」という認識が難しい方もいらっしゃいます。認知症の場合、その場の雰囲気から、時間帯などを把握することが難しいため、準備段階で、できる限り食事が始まるという認識をしてもらうことや、食事をする体勢になってもらうことが大切です。
食事前に行うことが多い具体的なケアとしては、口腔体操や献立の説明などがあります。
口腔体操は、口や舌を動かすことで口腔内を潤し、食事をする体制を整える効果が期待できます。
また食事が始まる前に、食事に集中できる環境づくりを行うことも大切です。例えば、テレビがついていると食事が進まない方がいる場合はテレビを消したり、音量を抑えたりする工夫が必要になる場合があります。
さらに、食事中に尿意を感じると席を立ったり落ち着かなくなってしまうこともあるため、排泄介助を済ませてから食事の時間を迎えるといった工夫も大切です。
このように、口腔内の状態や環境を整えてから食事介助を始めることで、スムーズに食事を提供できます。
食事介助の手順
準備が整ったら、いよいよ食事介助を始めます。手順は以下のとおりです。
- 安全で食べやすい姿勢を確保する
- エプロン等で洋服が汚れないように配慮する
- 水分で口腔内を潤す
- 主食と副食をバランスよく
- 飲み込みを確認し、食事のスピードは個々に合わせる
- 食後はリラックスできる体勢にする
ここでは、全介助の場合を想定した手順を記載していますが、手順はどんな状態の方でも同様です。
まずは姿勢を整え、食べ物を飲み込みやすく誤嚥の危険性が少なくなる体勢にします。ベッド上であれば、30度以上の角度が理想です。
それから、適宜エプロン等を使って、食べこぼしがある場合でも衣服が汚れないようにしておきましょう。
ここまで準備がおわったら、実際に食事介助に移りますが、まずはお茶や汁物などで口の中を潤してから食事介助をスタートさせるのがポイントです。
高齢者は唾液が少なく、食べ物が飲み込みづらくなる傾向があることを留意しておきましょう。
また、食べ物を飲み込むペースは個人差があります。口の中のものを飲み込んだことを確認してから次のものを口に運ぶようにしましょう。喉の動きに着目するとわかりやすいです。どうしてもわからない場合は、食べ物を何も乗せない状態でスプーンを口元に近づけ、口を開けてもらうなどの方法も有効です。
食後は、安楽な姿勢にして、リラックスして過ごせるように環境調整を行いましょう。ベッド上の場合は、食後すぐにフラットにせず、ギャッジは30度程度で楽な体勢を作るのがポイントです。頭を下げすぎると食べ物が逆流し、嘔吐や誤嚥のリスクが高くなるので注意しましょう。
食事介助の注意点
続いて、食事介助に入る際の基本的な注意点を4つご紹介します。
目線の高さを合わせる
食事介助の際、目線を要介助者に合わせるようにしましょう。
利用者さんを見下すような視線の位置にならないように注意が必要です。立ったままの介助は控え、椅子などに腰掛けて、車椅子やベッド上にいる利用者さんと同じ目線になるように工夫しましょう。
できれば利用者さんの利き手側から
食事を1人で摂ることができない場合であっても、ご自身で食べる時と同じ側からスプーンが口に運ばれる工夫を忘れずに。在宅介護などで、ベッドの位置を調整しづらい場合などを除いて、食事は本人の利き手側から行うのが基本です。
食事が終わったら、食事量と水分量を忘れずに記録する
食事介助に限ったことではありませんが、ケアに入ったら、記録を忘れずに行いましょう。食事量はもちろんですが、普段と違う様子があれば必ず記録と申し送りを忘れずに。
いつもと比べて…
- 食事量が少ない
- 拒否が強い
- 飲み込みに時間がかかる
などは体調不良や認知機能の変化などの可能性があるため、他の職員と共有するようにしましょう。
口腔内に残さが無いか確認する
食事が終わったら、口の中に食べ物が残っていないかを必ず確認しましょう。食べものが口腔内に残ってしまっていると、誤嚥や窒息の原因にもなり得ます。お茶などを飲んでもらい、綺麗にするか、それが難しければスポンジなどで除去すると良いでしょう。特に、寝たきりや重度の認知症がある場合などは、口腔内に残さがあることを認識できない場合もあるため、しっかりと確認が必要です。
認知症の方の食事介助のポイント
次に認知症の方の食事介助についてポイントを解説します。認知症の場合、食事に限らず、介助に拒否を示すことが珍しくありません。拒否がある場合は時間を置いて再度試みるのが一般的です。
開口しない場合は、スプーンを口元に持って行ったり、好きなもの・反応の得られるものから口に持っていったりするなどの工夫ができます。筆者の経験では、甘くて柔らかいものや冷たいもので開口が良い場合が多かったため、ゼリーやアイスを使って口を開けてもらう工夫をしました。是非試してみてください。
認知機能の低下で開口できない状態が続くようなら、看護職などと対応を協議することが必要な場合もあります。胃ろうの適応になることもあるため、記録をしっかりと残して情報共有を行いましょう。
介護現場で使える食事介助の豆知識
最後に、よくある食事介助の悩みに回答します。介護士が直面しやすい悩みにフォーカスして回答していますので、日々のケアの参考にしていただければ幸いです。
まとめ
食事介助は、介護士の基本的な業務ですが、スムーズにケアが進まない場面も珍しくありません。そのような場合には、他の職員と相談のうえ、より良い方法を模索しましょう。
本記事で食事介助の基本を押さえ、明日からの業務に活用していただけたら幸いです。