この記事の要約

介護福祉士の仕事内容は、施設や自宅で過ごされている要介護者の支援です。具体的には、排泄・食事・更衣・外出などの介助全般です。訪問介護以外の介護業務は資格がなくても従事することができ、資格の有無で業務内容に差が生まれることはありません。特養や老健など、24時間稼働の施設・デイサービス・病院・訪問介護事業所の介護福祉士の1日のスケジュールをそれぞれ記載していますが、職場によっては多少違いがあるので、基本の流れとして参考にしてください。また、介護福祉士の給与は近年上昇傾向にあり、調査対象の特養のうち、78.6%が「この1年間で給与を上げた」と回答しています。

介護士としてすでに勤務をしていたり、介護士の仕事に興味を持っていたりする方の中には、介護福祉士の資格について興味がある方も多いのではないでしょうか。また、介護の仕事をしていく中で介護福祉士の資格は本当に必要か?と疑問を感じることもあるでしょう。

介護の仕事は多くの場合、資格がなくても従事できますが、介護福祉士を持っていることで得られるメリットも多くあります。本記事では、介護福祉士の仕事内容を始め、無資格との違いや施設別の1日の流れ、働き方の違い、給与の差などについて、現役介護福祉士の立場から、分かりやすく解説します。

介護福祉士を取得するか迷っていたり、転職を検討されたりしている場合は、ぜひ本記事を参考にしていただければ幸いです。

介護福祉士の仕事内容とは?

介護福祉士の仕事内容は、利用者・患者の生活に必要なケア全般です。具体的には、次のようなものが挙げられます。

  • 食事介助
  • 排泄介助
  • 入浴介助
  • 更衣介助
  • 服薬介助
  • 車いすやベッドへの移乗
  • シーツ交換
  • 季節ごとの行事の企画と実行
  • 医療職との連携
  • ご家族の対応
    など

仕事内容の範囲は非常に広いですが、職場によってその範囲は多少異なります。役職によっても業務内容は変わってきますので、就職や転職を検討する際は、職場ごとの1日の流れを面接時に確認するなどしておくと良いでしょう。

資格の違いで業務に差はあるの?

介護現場で働く場合、主に3つの資格を取得すると良いと言われています。それは初任者研修・実務者研修・介護福祉士です。介護現場で働く人たちは、大抵この3つの資格のどれかを保有していることが多いでしょう。しかし、介護施設や病院での介護業務は、無資格の状態でも従事できるため、資格を保有せずに働く方もいます。無資格の方を含めると、介護現場には「無資格・初任者研修・実務者研修・介護福祉士」の4種類の資格保有者がいることになりますが、保有している資格の差で、業務に違いが生まれることはありません。資格の違いで、役職に就けるか否かが問われる場合はありますが、同じ役職なら、業務内容に差が出ることはほとんどないと考えて良いでしょう。

一方で、訪問介護の場合は、無資格では従事できないので注意が必要です。

介護施設の業務と1日のスケジュール

では、より具体的に介護福祉士の仕事内容をイメージするため、1日のスケジュールを施設別にご紹介します。実際は、法人・企業によって多少の違いがありますが、基本的な仕事の流れとして参考になれば幸いです。

24時間稼働の施設に勤務する介護福祉士のスケジュール【特養・老健・有料】

24時間稼働の施設は、4交代制勤務の場合が多く、時間帯によって業務内容が異なります。今回は日勤と夜勤のスケジュールを紹介します。

介護施設の日勤のスケジュール

時系列で業務を解説していきます。
09:00
↓  申し送りが終わり次第以下の業務開始
10:00
↓  利用者対応(排泄介助・水分提供)・シーツ交換
12:00
↓   休憩(別勤務の職員が食事介助)
13:00
↓  入浴介助
15:00
↓  おやつ提供・レクリエーション
16:00
↓  排泄介助
17:00
↓  食事介助・記録・退勤
18:00

9時~18時の日勤帯の業務の流れは以上です。業務中の運動量はかなり多くなる場合も珍しくありません。しかし、職員同士の協力体制がしっかりしていれば、お互いに業務を手伝うなど、職員の経験や年齢などに応じて、みんなで業務を進めていくことも可能です。体力に自信がない方も、過度に心配する必要はないでしょう。

介護施設の夜勤のスケジュール

夜勤業務は17時前後~翌10時前後の通称ロング夜勤か、21時前後~翌7時前後の通称ショート夜勤の2種類の勤務形態があります。ロング夜勤の施設がほとんどですので、17時前後~翌10時前後のタイムスケジュールをご紹介します。

17:00 申し送り
17:30
↓  夕食準備・食事介助
18:00
↓  夕食下膳・ナイトケア
19:00
↓  記録・フロア掃除・個別ケア・ナースコール対応
00:00
↓  休憩
02:00
↓  排泄介助・ナースコール対応・記録
04:30
↓  排泄介助・モーニングケア
07:30
↓  朝食準備・食事介助
09:30
↓  歯磨き・排泄介助など
10:00 退勤

デイサービスに勤務する介護士のスケジュール

デイは日中のみの営業なので、夜勤はありません。24時間稼働ではないため、カレンダー通りの休日で働きたい方におすすめです。またデイは、要介護者が自宅から通う場所であるため、利用者の送迎業務があるのも特徴です。

08:30
↓   利用者のご自宅へお迎え
09:00
↓   施設到着後、健康チェック
10:00
↓   レクリエーション・入浴介助・機能訓練など
12:00
↓   昼食、食事介助
13:00
↓   自由時間、休憩
14:00
↓   体操や折り紙、塗り絵など
15:00
↓   おやつ
16:00
↓   ご自宅まで送迎・帰社
17:00

デイサービスは自立度が高い利用者も多く、特養などの施設と比べると、介助量が少ない場合もあります。体力に自信がない方や軽い介助から経験し徐々に慣れたいと考える方に向いている職場と言えるでしょう。

病院に勤務する介護士のスケジュール

介助職が病院で働く場合、夜勤の有無は病院によって異なります。車いす→ベッドなどの移乗や検査・リハビリなどへの送り迎え・リネン交換などが主な仕事です。ただし、配属される科によっても業務内容が多少変わりますので、参考程度にご覧ください。病院でも早番・日勤・遅番・夜勤の4つの勤務があることが多いですが、今回は日勤帯の業務をご紹介します。

09:00
↓  申し送り・排泄介助・リネン交換等の環境整備・物品請求など
10:30
↓  午前の水分提供準備と介助・昼食準備
12:00
↓  昼食の食事介助・下膳
13:00
↓  排泄介助・物品補充・検査やリハビリへの患者の付き添い等
16:00
↓  記録・夜勤への申し送り・退勤
17:00

病院では、基本的に看護師など医療職の指示の下で業務を行います。主体的に動きたいと考える方には物足りないかもしれませんが、医療の知識を付けたい・看護師へのキャリアチェンジも視野に入れたいと考える方にはおすすめです。

訪問介護の業務と1日のスケジュール

最後は訪問介護事業所に勤めた場合の1日の流れを見てみましょう。訪問介護は施設とはスケジュールが大きく違います。単独行動が多く、直行直帰が可能などの特徴があるため、行動の融通が効きやすい職場も多いかもしれません。

08:30 出勤
09:00
↓  移動
09:30
↓  Aさん宅へ伺い、介護サービスと生活援助を提供
10:30
↓  移動
11:00
↓  Bさん宅へ伺い、介護サービスと生活援助を提供
12:00
↓  昼食、休憩
13:00
↓  移動
13:30
↓  Cさん宅へ伺い、介護サービスと生活援助を提供
14:30
↓  移動
15:00
↓  Dさん宅へ伺い、介護サービスと生活援助を提供
16:00
↓  帰社
16:30
↓  記録・引継ぎ後に帰宅
17:30

介護福祉士の働き方

介護現場では、正社員・パート・派遣など様々な働き方ができますし、平日休みなども可能です。ライフステージの変化に合わせて働き方を変えることも容易ですので、非常に働きやすい業種と言えるでしょう。

また、介護講師やケアマネなど、介護現場以外の仕事や事務中心の業務に転向することも可能です。特にケアマネは、介護福祉士として5年の経験を積んだあとに受験資格が得られる上級資格のようなポジションの資格でもあります。長く介護業界で仕事をしていきたいと考えている方は、積極的に取得を検討すると良いでしょう。

介護福祉士の夜勤業務って大変?

介護士の夜勤業務については、「なんだか大変そう…」というイメージを持っている方もいるかもしれませんが、実際はそんな事はありません。筆者も現役介護福祉士として夜勤業務にも従事していますが、夜勤中は自由時間が多く、ナースコールも少なめです。

ただ、正直に申し上げると、夜勤業務の大変さは「職場によってかなり違いがある」という印象です。また先ほども解説したように、8時間夜勤と16時間夜勤がありますので、求人を探す際は、ご自身の体力やライフスタイルに合うか否かをしっかりと見極める必要があるでしょう。

介護福祉士の給与はどのくらい?

最後に介護福祉士の給与事情について少し解説します。

介護福祉士の給与は、近年上昇傾向にあり、厚生労働省が公表している令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果によると、去年1年間に「給与を上げた」と回答した施設は半数以上にのぼります。特に介護老人福祉施設(特養)では実に78.6%の施設が給与を上げたと回答しています。

以下に、保有資格の違いによる給与比較表を掲載していますので、介護福祉士を取得するかを迷われている場合は是非、参考にしてください。資格の差で給与はかなり違いがあるため、介護業界でしばらく働きたいとお考えの場合は、介護福祉士の取得を強くおすすめします。

保有資格 平均月収 推定年収
介護福祉士 約33万円 約396万円
実務者研修 約31万円 約372万円
無資格 約27万円 約327万円

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/21/dl/r03kekka.pdf(令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果)

なお、上記はあくまで平均値です。役職がついたり、首都圏で働いたりすれば、表示した金額よりも大幅に高い年収をもらえる場合もあります。

まとめ

今回は、職場別に介護福祉士の1日のスケジュールをご紹介しました。また、介護福祉士の働き方や、給与についても簡単に解説していますので、仕事をする場合のイメージが本記事を読む前よりも少し具体的になってきたのではないでしょうか?

介護の仕事は、大変な場面もたくさんありますが、それ以上にやりがいがあり、お給料もしっかりといただけるお仕事です。また、シフト勤務のため、プライベートを優先しながら働くことも難しくありません。
メリットも非常に多い仕事ですので、ぜひ前向きに介護業界への転職や介護福祉士の資格取得をご検討ください。

ABOUT ME
椿 るい/現役介護福祉士ライター
介護業務に従事して9年目の介護福祉士。 介護現場でのリアルを伝えるため、Webライターとしても活動中。 特養や精神科での勤務経験を活かし、事実に基づいた「生の声」をお伝えします。また、ユニットリーダーなどの役職の経験や常勤・派遣・夜勤専従派遣といった複数の働き方の経験もあるため、介護士としての働き方や給与の問題は特に経験と知識が豊富です。